昔うちがまだ汲み取り式便所だった頃
2001年3月1日生まれ育った家がまだ汲み取り式便所だった頃、
ウジ虫がたくさんわいて出た。
あたしはウジ虫が大嫌いで、そいつがいるといつも
便所から一番近い部屋にいた祖母を呼んで取ってもらっていた。
いつも祖母は割り箸を便所の隅に置き、
それでウジ虫をつかんで便所の穴に落としていた。
あたしは密かにその箸を「ウジ箸」と呼んでいた。
いつのまにかウジ虫はいなくなった。
そして小学5年のときに祖母が亡くなった。
大好きだったので悲しかったが、誰かが面白がって
「ババは今でもえりつぃんのために便所でウジ虫を取っているよ」
と言ったので、暗くなってから便所に行くのが怖くなった。
その想像はものすごくデフォルメされていて、
大好きだった祖母は、ただの便所の妖怪になってしまっていた。
高校に入った頃、便所も水洗トイレになり、
さらに10年後、生まれた家も越すことになった。
引越準備に疲れて部屋の隅で寝ていたら、
「自分だけ寝てんじゃねーよ」と言いながら、
姉がなにか固いものであたしの頭をゴンゴンと殴った。
寝ぼけた目でなにで殴られたのか確かめようとすると、
それは便所の穴にスリッパが落ちたときに使う引っ掛け棒だった。
懐かしいじゃねーかと思う余裕もなく汚ねぇっ!!と叫んで起きあがると
姉はさらにほれほれと顔に近づけてきた。なにすんだこのアマと思いながら
すぐさまよけてダッシュで別の部屋に逃げた。姉はそのまま引っかけ棒を
持ち続けて働かないやつを脅し続けたのでした。おわり。
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